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『靖國のこえに耳を澄ませて』
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 今年は気象庁の予報が的中し、例年より早い開花となつた。都内の各所では咲いている所が見られた。この桜の花を見てゐると、他でもない、この『靖國のこえに耳を澄ませて』(明成社)と、そこに紹介されてゐる戦歿学徒達の事を思ひだしてしまふ。

 ここに紹介される十七名の戦歿学徒達は皆若い。中には自分よりも若い者達が幾人も居る。そして彼らの遺書を拝するに、その明晰な頭脳と高い智識。今の大学生とは比べるべくもないだらう。

 美しい心を持った日本人、さうした言葉は彼らのためにあるのではないかとすら思へてしまふくらひに、彼ら流麗な国語で記した書は読む者の心を打つ。自分が初めて、この本を読んだのは高校生の時であつたが、数頁おきに涙が溢れ、感涙で頁を繰るのに困つた事を鮮明に覚へてゐる。

 彼らの身近に居た人々の話も掲載されてゐるが、純粋で素朴であり、ちまた言はれる、洗脳された狂信的な兵士と云つた姿は微塵もない。ただただ、彼らは家族と、愛する者、そして自らが連なり、そしてこれから続いて行く日本といふ共同体の為に起つたのだと読む者に自然に感じさせる。

 さうした彼らが、愛し、友や家族、また後世に生きる我々との再会の印しとしたのが、桜の花であつた。日本人は古来より桜の花を愛した。また彼ら戦歿学徒達も桜の花に、自分たちの思ひを後世の我々へと託したのだと思ふと、感慨深いものがある。

 この本を読んでからといふもの、桜の花を見る度に、さうした彼らの思ひに如何に応へて行くかといふ問ひを、頭の中に巡らせる春である。


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by shikisima594 | 2006-03-22 00:50 | 読書録
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