恐らく、藤田東湖って誰?という人が今の日本では大半だろう。藤田東湖は江戸時代の水戸藩の藩士として活躍し、尊皇攘夷の思想を説き、日本の大義を明らかにし、多くの人々に影響を与えた人物である。今年は奇しくも、藤田東湖生誕200周年であると同時に、藤田東湖没後150年である。
藤田東湖から教えを受けた、あの西郷隆盛が「天下真に畏る可き者なし、唯畏る可き者は、東湖一人のみ」と言い切り、吉田松陰や橋本左内など多くの維新の志士達が教えを請いに東湖を尋ねた事からも、いかに凄い人物であったかが察せられるだろう。 この『藤田東湖の生涯』(但野正弘著、錦正社刊)は、そんな藤田東湖の人柄を余す所なく、解り易く書いている。水戸藩の家臣としての東湖、父・夫・息子としての東湖、師としての東湖、そして日本人としての東湖。今まで誰も書いて来なかった多くの視点から東湖を偲べる。随所随所に東湖の面目躍如たる逸話があり、すぐに読了してしまった。 東湖の人柄は、豪快にして繊細、厳しさと優しさを兼ね、学問と武道の両道を極めている。人に尽す者のあり方、人の上に立つ者のあり方、日本人の生き様、そのような、現代の我々でも必要とする生き様の鏡である。 また、藤田東湖が冤罪を受けて幽閉されている最中に記した「正気の歌」は有名だ。支那の文天祥の「正気の歌」を基に、東湖が日本の国体と自分の決意を綴った詩で、その美しく完成度の高い文から、幕末の志士の間で広く歌われた。かく言う僕自身も、つまらない授業の合間には、暗記した「正気の歌」をノートに書き写していたものだ。 「天地正大の気、粋然として神州に鍾る」に始まり、「死しては忠義の鬼と為り、極天皇基を護らん」に終わる。よく獄中にあってこの文を綴れたものだと驚かされてしまう。それだけに、東湖の壮烈なまでの日本に対する想いと、決意の強さには感動を禁じ得ない。 最後に、この本を読んでいて心に残った箇所の一つを引いてみる。東湖は当時、世間で幅を利かせていた学者連中を次のように批判している。 「今世の儒者動もすれば、唐人の事は丁寧に申、司馬温公(宋代の学者『資治通鑑』の著者)、朱文公(宋学を大成した朱子)、韓魏公(宋代の宰相)など唱へ、さて新田義貞が云々、楠正成が云々と申候類、相済まず、右様の人をば、僕毎に和唐人と唱へ申候。」(155〜156頁) 今の世では、学者のみならず「和唐人」が増えてしまった。中共に媚びへつらう「和唐人」とアメリカに盲従する「和唐人(和米人か?)」。今度からは、そんな現代の和唐人どもが書いた本の批判的紹介もやってみたい。 http://www5a.biglobe.ne.jp/~kinsei/0351.htm 皇国史観研究会代表 タカユキ
by shikisima594
| 2005-12-21 12:26
| 読書録
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