『国体に対する疑惑』
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「 天皇ってなんでエラいの?」という問い掛けが投げかけられることがある。それだけではない、僕たちのような事をしていたら、もっと鋭い疑問や指摘が皇室に対して言われる。そうした時に返す言葉が無ければ、国体は守られない。

 特に大東亜戦争敗戦後、日本は国体は否定すべき概念とレッテルを貼られ、皇室への批判的言辞は掃いて捨てるどころの騒ぎではないのは、周知の事だ。この『国体に対する疑惑』が発行されたのは昭和三年だ。その当時では、こんな題名の本を出すだけで大事だ。ショッキングな題名、装丁と中身から『国体に対する疑惑』はベストセラーとなった。

 国体に対する赤裸々な疑惑が書かれていたため、宣伝で目次の公開が禁じられた。それほど驚天動地のことだったのだ。さて、その中身だが“国体に対する疑惑”について著者の里見岸雄博士が一つずつ回答を書いて論破して構成だ。

 里見岸雄博士は明治三十年に国柱会創始者である田中智学氏の息子として生を受け、早稲田大学哲学科を卒業後、イギリス、ドイツ、フランスに留学し、昭和十一年に日本国体学会を創設し、立命館大学法学部国体学科で教鞭を執り、戦後は憲法改正運動と国体護持運動に生涯を捧げた。歴史学、法学、哲学、宗教学に深い造詣を持ち、生涯の著作が英文と独文を含めて200冊というのだから途方もない天才的頭脳の持ち主だ。

「『畏れ多がり』『不敬がり』さへすれば果して国体の尊厳が保てるか?」「国体を信ぜんとする者は先づ、此の疑惑に答へよ」とある。肝心の目次を一部紹介しよう。
・天皇陛下の御真影に敬礼するは要するに偶像崇拝にあらずや
・天皇は何故神聖なりや
・我等は何故天皇に忠義を尽さざるべからざるか、忠義観念はつひに人の理性を昏味ならしむる麻酔剤にはあらざるか
・忠君愛国といふことは要するに資本家階級が自己の保存の為にする宣伝道徳にはあらざるや
・日本民族はアイヌ民族を征服したり、是れ果して正義人道に協ふや
・壬申の乱の如き忌はしき歴史あり、何を以て国体を讃美するや
・主権は人民全体の上にあるが正当にして一個人が主権を独占するは不合理にあらざるや
・国体、国体といつて、国体を無上のものの如く言ふ人があるが、そんな抽象的理想よりも、現実によりよく生きることの方が遥かに大事ではないか

…その他あわせて計50の疑惑が論じられている。一見して分かるように、現在でも盛んに言われる疑惑がほとんどだ。これを戦前に論じたのだからスゴい。博士は次の様に言う「世の多くの国体論者、皇室中心主義者と名乗る人々が、戦利あらずと知るや、一も二もなく、『畏れ多い』『不敬だ』『国賊だ』といふ奥の一手一点張りで左傾連を窮地に陥れようとするは、その至誠至情まことに涙ぐましきことではあるが、然もそも効果を以て論ずる時は頗る薄弱といはねばならぬ。」

 戦前においては「不敬!」「国賊!」と言えば済んだが、今は反皇室の左翼に「国賊、非国民!」と罵っても「そうです、私は地球市民ですから非国民ですよーだ」と開き直るに決まっている。ゆえに徹底した国体護持の理論が求められる。

 マルクスとエンゲルスはかつて、社会主義を空想的なものから科学的、論理的なものとしたが、里見岸雄博士は実に空想的国体論を廃し、科学的国体論へと昇華した先駆けだ。その理論がわかりやすく、書き尽くしてあるのが、この『国体に対する疑惑』だ。国体に疑惑を持つ人も、国体を守ろうとする人も絶対に読んだ方が良い。

 現在、展転社から復刊されて販売されている。

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by shikisima594 | 2006-05-25 00:47 | 読書録
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