『A2』
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 オウム真理教(アレフに改称)が、麻原彰晃の影響力を薄めようとする上祐派と、麻原彰晃を以前の様に崇拝する反上祐派に分裂したという報道があった。オウム真理教が松本サリン事件と地下鉄サリン事件という、我が国史上未曾有の無差別殺戮事件から十年以上が経過した。今だに事件の爪痕は多くの人に残され、オウム真理教への反発は極めて根強い。

 四月の初め頃、テレビを見ていると、世田谷区の僕の下宿の近くにオウム真理教の本部があることを知った。興味本位で行ってみると、近くには「オウムは出て行け」「平穏な町を返せ」という横断幕や垂れ幕があちこちにあり、オウム真理教が入居するマンションの前には機動隊のバスが止まり、数人の警察官が退屈そうに監視を続けていた。

 脇にある付近の住民が建てた監視小屋の中には誰もいなかった。マンションの横を通り過ぎて行く大学新入生の女の子達が、垂れ幕を見て、「平穏な町を返せだって」「えっ、何これ?」「わかんない」「高層マンションでも立のかな?」と会話をしていた。オウム真理教が入居しているそのマンションを取り巻く構造をながめ、僕は奇妙な言い知れぬ違和感を感じたのを覚えている。

 さて、このA2という映画は、映画監督の森達也氏が、一連の事件から数年後のオウム真理教を取り巻く状況を、時に内から、時に外から撮影したドキュメントだ。大学に入って間もない頃に知人から紹介されて見た。

 正直に言って、驚いた。僕がそれまで抱いていたオウム観が崩れたといっても過言ではない。とある教団施設ではオウム信者と、「殺人集団オウムは出て行け」と言っている住民達が和気あいあいと仲良くしている。初期の頃の立ち退き運動を両者で回顧して笑ったり、さながら田舎の寄り合いのようだ。

 そして彼らオウム信者が立ち退く際には住民達に教団の本をあげたり、住民も「元気で頑張れよ」と声を掛けている。しかしそれをマスコミは報じようとしない。

 上祐がいた横浜の施設での事だ。いわゆる右翼民族派の活動家が施設の前で「オウムと会って話をさせてくれ」と警備の警察官に頼んでいる。しかし、警察は警備を理由にこれを一切拒否。右翼の方が身体検査をしてもいいし、会談に警察官を同席させてもいいから会わせて話をさせてくれと言っても、警察官達は首を縦に振らない。所詮これが警察官というものだろう。

 右翼の人は言う。「出て行けといって、仮に出て行ったとしても他の所でまた同じ問題になるだけで、根本的・本質的な問題の解決にはならない」と。

 年が明け、横浜で右翼民族派の神奈川県維新協議会がオウムの解散を求めてデモを行う。戦闘服も着ず、罵声もあげず、淡々とオウムの解散を求めてのデモだ。なぜなら立ち退きを求めただけでは根本の解決にはならない。このデモの模様を撮影するために森監督も街宣車に乗るのだからスゴい。

 しかし、翌日の新聞には「立ち退きを求めてデモ」と報じられる。とにかく、この映画はオウムを取り巻く現象に代表される現代日本の問題の構造と、人間とはどんなものかと考えるにあたって、非情に面白い視点を提供してくれる。

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by shikisima594 | 2006-05-30 00:33 | 映画
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