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共産党宣言を読む(第一回)
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かつて、ヨーロッパにあらわれると言われた「妖怪」が死んだと言われて久しい。自分は物心がついたのも、少しは物を考えるようになったのも妖怪が死んだとされた後であるから、自分は直接的に妖怪の恐怖を感じた事はないが、この妖怪を退治しようとしたのが、かのアメリカをはじめとする多くの国々だったというのだから、この妖怪も大したものである。

では、その妖怪とは何であるのか?それを知るために「妖怪の入門書」とされるマルクスとエンゲルスの『共産党宣言』(以下「宣言」)を読み、以下に自分の拙い感想文を書きたい。尚、日本で『共産党宣言』は、明治三十九年にアナーキスト(無政府主義者)の幸徳秋水と堺利彦による翻訳が出て以来、地下出版を含めて膨大な量が出版されて来た。今、自分の手元には、それぞれ別の出版社から出された『共産党宣言』が六冊あり、以下に引用する文はいずれから引用した物であるかを明記しないことを初めに断っておきたい。

「これまでのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である。」の有名な文言に始まる第一章「ブルジョアとプロレタリア」において「宣言」は「階級闘争」の歴史を概説し、そこから資本家階級=ブルジョアと、その産物である労働者階級=プロレタリアの誕生と、それらの持つ特質を説明する。

曰く「ブルジョアジーとは生産諸関係を絶え間なく革命し続けていかなければ生きていけない」のであり、そのために「自分達の生産物の販路をますます拡大していきたいという欲望にかられて、全地球上をかけめぐり、すべての民族、もっとも未開な民族をも文明の中にひきずりこむ」ことによって、「民族的な土台を取り払ってしまった。」それはつまり「ひとことで言えば、ブルジョアジーは、自分自身の姿に似せて世界を創造するのだ」という。

この指摘は、日本が黒船によって開国させられたことに始まり、近年のグローバリゼィションなどを見るにつけ、実に的を射たものに思えてならない。

現代の世界中の国々は国際資本主義・多国籍企業により画一的な景色と価値観が形作られて、その国固有の産業や経営手法、はたまた倫理すらも「利己的な打算という氷のような冷水につけて溺死させ」られているのが、今の資本主義社会の実態ではないのか。

そうしたことからして、決して「宣言」は古くさいものではなく、むしろ「ブルジョア」によりグローバル化の名の下に新世界創造が進められている今こそ読む価値があるように思えてならない。(つづく)

(写真は角川書店の『共産党宣言』である。当時、角川書店は今のようにロボットと美少女ばっかりの二次元出版社ではなく、マルクス、エンゲルス、レーニン、毛沢東、チェ・ゲバラ、そしてなぜかヒトラーの文庫本を刊行する奇抜な本屋だった。訳はイマイチだが、いかにも「マルキシズム!」といった表紙に味があって良い。)
by shikisima594 | 2006-01-12 13:37 | 読書録
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