共産党宣言を読む(最終回)
f0018981_1327446.jpg

 「日本は世界で唯一成功した社会主義国である」とはソビエト最後の書記長ゴルバチョフの言葉らしい。社会主義化が進んだ国で行われる諸方策として『共産党宣言』は十の方策を提示しているが、「すべての国外逃亡者と敵対分子の財産の没収」のようなものを除けば、税制や銀行や運輸機関の在り方などは一昔前の日本を連想させる。  

強度の累進課税と官僚による統制と銀行・金融機関の規制が日本の社会主義国としての成功を支えていたのだろう。しかし、今の日本はグローバルスタンダードの名の下にアメリカに追随し、これらの長所を自ら放棄しつつある。果たしてその先には何があるのだろうか。ここではこれ以上言及しない。  

第三章「社会主義的および共産主義的文献」では、いままでの「空想的社会主義」の理論的矛盾の性質を批判し、自らが「科学的社会主義」あることを宣言している。自分はこれらの理論をそれぞれ詳細に分析して論述する学識を持ち合わせていないので、このくらいの紹介で勘弁願いたい。  

そして最後の第四章「種々の反対党に対する共産主義者の立場」では各国の社会主義・反体制派と共産主義者がいかに共闘するかという戦略を述べてから「共産主義者は、自分達の目的が、これまで一切の社会秩序を暴力的転覆によってしか達成されえないことを、公然と宣言する。(中略)万国のプロレタリア、団結せよ!」との有名な言葉で「宣言」は締めくくられる。

この「暴力的転覆云々」という箇所は、日本共産党の影響下にある出版社や翻訳者は「強力的転覆」と歪曲して翻訳している。自分の手元にある『共産党宣言』から、この箇所の訳を見てみよう。

服部文男訳『共産党宣言』新日本出版社は「社会秩序の強力的転覆」
塩田庄兵衛訳『共産党宣言』角川書店は「社会組織を強力的に転覆」
大内兵衛・向坂逸郎訳『共産党宣言』岩波書店は「社会秩序を強力的に転覆」
マルクス=レーニン主義研究所訳『共産党宣言』大月書店は「全社会組織を暴力的に転覆」
新訳刊行委員会訳『新訳・共産党宣言』現代文化研究所は「社会秩序の暴力的転覆」
金塚貞文訳『共産主義者宣言』太田出版は「社会秩序を暴力的に転覆」

このようになっている。ちなみに、大月書店から発行されている現行の『共産党宣言』では「強力的」と修成されている。「強力的」なんて不自然な言葉は聞いた事が無い。マルクスは「共産主義者は自分の見解や意図を隠す事を恥とする。」と書いている。この歪曲翻訳をなしたエセ共産主義者達は恥を知るべきである。  

この「暴力的転覆」という言葉は、特に民族派や保守派をはじめ、一般人からも批判の的となってきた。民族派は「暴力主義を掲げる共産主義を撲滅する」として共産主義者に対して直接的行動を行ってきた。  

しかし、むしろ「一切の社会秩序を転覆させなければ目的が達成されない」とまでに思い詰める共産主義者の根源となっている資本主義の腐敗の是正に民族派が取り組む事によってのみ、共産主義という妖怪は退治できるのではないか。もし仮に共産主義の著書を全て焚書にしても、資本主義の腐敗があるかぎり共産主義は何度でも蘇るだろう。  

今、自分の手元には数冊の共産主義文献の古書がある。その多くが昭和四十年代に刊行されたものであり、各頁ごとに赤鉛筆で多くの傍線が引かれ、読んでいた者の考えや、意訳が記されている。それを眺めていると、何とも言えない気持ちになる。彼らは本当に純粋で真摯に、この国と世界のこれからを考えていたのだろう。彼らとは考えが違うにせよ、彼らの情熱と真面目さは見習わなければならない。  

それまで読まず嫌いだった自分が高校時代に初めて『共産党宣言』を読んで、納得させられる所が意外と多かった事に自分でも驚いた。以来、古本屋でまだ手に入れていない『共産党宣言』を見ると迷わず買って読み耽ってしまう。  

もちろん勉強不足で『共産党宣言』を鵜呑みにしたこともあると思う。まだまだ勉強が必要である。最後に、以前紹介した『大義』の杉本五郎中佐の「国を廃頽に導くものは共産輩に非ず、人民戦線に非ず、乃至社会主義にも非ず、此等の主義は日本精神練磨の大砥石なり」という言葉を紹介し結びとしたい。(完)

(写真は太田出版の『共産主義者宣言』、太田出版はサブカル系のあやしい本ばかり出している所という印象があったが、こういう本も出している。テクノ調っぽい表紙と読みやすい翻訳が良い。)
[PR]
by shikisima594 | 2006-01-18 13:27 | 読書録
<< 「愛国」を疑え! 共産党宣言を読む(第三回) >>