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共和制と君主制と世界
 昨日、定例の勉強会が行われ、私が壇上に立ちました。その活動報告も兼ねて、ここでのお話をお披露目いたします。

 申すまでもなく我が国は伝統的に王制である。そして、現在世界に一般的なのは共和制の国家である。この二つの体制は、世界の体制の二大潮流といえる。同時にこれらは世界史の中で密接にイデオロギーと結びついてきた。その流れの中で、わが国の相対的な位置付けを探りたい。

 ここで王制というのは、階級を前提に、血統によって世襲される正統性から最高権威を決定する体制を指す。ここに帝国や皇国を含めて考えても良いだろう。
 共和制というのは、端的に言って民制のことであり、ここには階級格差の少ない状況、あるいは最高権威が常に暫定的であり、その正当性が潜在的に多数の人間に共有される状態を含まれることになる。わが漢字文化圏には、共和制国家をさす言葉として民国の語があるのでこれを使う。なお、西洋の政治論では、二つの区別は若干違っているが、この際つまびらかには説明しない。

 さて、現代の世界には共和制のイデオロギーが最も盛んであって、ややもすれば、王制は民制より劣っているともされがちである。これらはマルクス思想にも大きな要素として見出しうるが、より根本的にはフランスの普遍思想、或いは民主主義及びそれより遡るルネサンス時期のイデオロギーがある。
 ここにあげたのは結局西洋人の政治論とイデオロギーであって、本来我々のあずかり知るところではない筈だった。だが彼らの力が世界を覆いつくし、今各国の王朝やそのほかの血統主義的社会を根絶やしにしようと謀っている以上、これを無視することはできなくなった。この問題意識をもって、講義を行う。


 結論から始めなければならない。先ほど言ったとおり、彼らの考えは世界中で先進的なものとして受け入れられてきたが、少なくとも私の考えでは、彼らはいくつかの重要な問題について、完全に誤った認識を持っている。ここでは、その一つを説明したい。

 かつて西洋人が、彼らの政治論において自問していた次のような命題があった。そして今日では、これは政治論を行う人間にとって必要不可欠な通過儀礼となるに至った。いわく、「人類にとって良いのは共和制か王制か。」である。ところが私には、このような疑問自体が既に欠陥を持っているとしか考えられない。
 仮に、彼らの質問に答えようとするなら、その前に、彼らの質問にはいくつかの限定要素を補う必要がある。しかして、その全体は以下のごとくなろう。「世界の全民族・宗教・慣習ひいては文化にとって、彼らが国家を持つに際し、ありとあらゆる時代を通じて、共和制と王制のどちらが良いか」。
 そしてもちろん、その答えは決まっているのだ。「共和制である」。その上彼らは同じように民主制か専制かの是非を問い、今度は「民主制が全世界全時代に最もよい」という答えを導くに至るのだ。
 このように、あらゆる要素をひとまとめにして括ってしまおうとする彼らの認識は、あまりにも正確さを欠いているように思われる。認識に正確さを期しているのかどうかさえ疑問の多いところではあるが、一先ずは、思想自体に問題を求められるということを抑えていただきたい。

 かかる認識を前提にした瞬間、我々の結論は同時に方向付けられるところとなる。その批判の全体的な像は、「場合によるだろう」という平凡な一言に象徴されるのである。
 この際、政体または体制は、いずれの国においても将来的に安定されるということが重要である。この課題の意識の本に、それではその安定した政治体系が、その地域の或いは人々の文化の影響を被ってそれぞれ独立した姿となると予想したい。つまり、安定が目的なのであって、そのための手段として民主主義なり共和制なりといった政治論を考えるのである。そしてそこにはもちろん、各国や各民族の文化が理想とする政治体制が各々違ったものになるだろうという意識があるのだ。

 ところがこれに対して、西洋人の思想家はすこぶる強硬な立場であり、我々「アジア人」のような「辺境の人々の特殊な事例」に最も妥協的な哲学者さえ、「最終的には共和制で民主制が正しい」と信じる者が多い。彼らの考えは、全時代とは言わないまでも、将来においては必ずその体制が良くなるという考えに基づいていて、つまり「彼らにはまだこの先進的な体制を輸入できるほどの段階でない」というくらいの意識があるのである。

 とりあえずこの場を借りてご説明したいのは、この共和制と王制に関する問題についてである。例えば我が国の立場のように、歴史を通じてずっと天皇陛下を戴いてきたという国があるように、ずっと共和制を営んできた国というものがあるのである。そして主張したいのは、以下の見解である。彼らの質問に関して言えば、共和制が良い国と、王制があっている国の両方があるのではないか。或いは、どちらでも良い国があったとしても全然おかしくないだろう。この立場は相対主義である。
 参考までに、主要な国家がこれまで歩んできた政体について書いておこう。

 例えば神話以来の王国とはいっても、必ずしも王朝が一貫しているということではない。
 王朝が歴史を通じてずっと続いてきたといえば、ご存知日本がその筆頭である。国家として認められる中では、これとトンガの例のみだろう。トンガは南洋の海洋国家だが、神話によれば、今に続く王家は二五〇〇年以上も前からあることになり、しかもかつての領域は今の領土をはるかに上回る。歴史的に王は多くの王国の上についたため、正確にはトンガ帝国が正しかろう。

 我が国が世界唯一の万世一系の国体だということは今まで我々の立場では盛んに言われていたが、西洋人が六〇〇年まえに世界に繰り出さなかったら、その数は二十かその上、もっとあったに違いない。今、血筋は残っていても植民地化されているせいで王たれない者はたくさんあると思われる。中には、英国の王家など全然比較にならない権威をもつ方もあらせられる。我々日本人は自国を誇る前に、いかに他者が破壊されてきたかを振り返る必要があるだろう。少なくとも私は、もし彼にあったときはそれなりの敬意を払う意志がある。アフリカ、南米、東南アジアなどにそうした例がある。

 神話以来の民国となれば、いわゆる非文明的な民族社会に多くあげることができる。農業をしていない民族はこの傾向が強い。一貫して選挙王制だった国という国はいくつもあるが、ここでいう国とは民族のことであって、近代国家として承認されている中には少ないようだ。それに、民族がまとまっていない国家を挙げてもつまらない。

 神話以来の王国を否定した民国となると、たくさんあげられる。現代において、それまで伝統があった王制が突然崩されることはよくある。
 大韓帝国は帝政を取りやめ、李朝帝家はその後単なる家族となった。大韓帝国の後身を名乗った政府組織の亡命者は、既に全然帝政の維持を望んでおらず、またアメリカの軍政下に誕生した政府はこれをついで大韓民国を宣言し、今に至る。李朝の王家は途絶えていないが、法律上帝国の帝位継承権を持つ者はいなくなった。そして、民国政府は王宮をはじめとする王家の領地や財産を没収するなどして弾圧している。
 女真族による中華政権は、漢族の共和主義者によって作られた中華民国に取って代わられた。民国とは共和国と同義であって、蒋政権は帝政を否定したことになる。つまり、帝政を基礎とする中華政権の基本構造は失われたと見るべきである。
 中華人民共和国とはしたがって中華共産民国とも訳せる政権であって、共和制の本質は変わらない。

 最も、この二つは神話以来の王国とはいっても、王家は時代によって全然異なってきた。王朝の交代を繰り返し、しかもその闘争によって国人が疲弊させられ続けていたとき、共和制への志向が生まれたとしてもなんら不思議ではない。中華政権の歴史的舞台であったシナは、つまり漢系民族の領域であるが、この王朝の闘争は留まることを知らず、長き王朝時代のうち四分の一も漢系民族による政権が無い。

 しかし、この二つの例を差し置いて、エチオピアの例は特筆に価する。彼らアムハラ人の国家は、三千年遡って紀元に当たる古い王朝を持っていた。伝統的に権威闘争はよくあって、一旦権威のあり方が代が、血統は十分万世一系といえるそうだ。
 だが、この王朝は惜しくも三十年前になくなってしまった。軍部による社会主義革命と粛清、そして国内に取り込みすぎた植民地人の反乱が相次ぎ、その後誕生した政権もアムハラ人のものでない。

 神話以来の民国を否定した王国としては、ローマ帝国は筆頭に上がる。
 西洋において、カエサルの登場はまさしく世界史的出来事と認知される。ローマ帝国の範囲は、当初イタリア半島のラテン系民族に限られたが、ラテン人の歴史を遡ると、神話や太古の昔にはこの国が選挙で首長を選んでいたらしきことがはっきりする。これは選挙王制と訳されるが、古代シナの「王」や日本の「きみ」という概念は血統を採るから、この語は矛盾していることになり、誤訳とみなせる。
 ところが皇帝カエサルの登場以降、この皇帝自体はそうでなかったが、諸侯と諸王の世襲はほとんど慣習化し、ひいては現代の諸侯にまでつながる血筋が多く残っている。ローマ帝国とその名義上の後継政権は消滅したが、別の諸国家に王制という遺産を残している。

 そして、この例は重要である。なぜかといえば、先にふれた西洋人の優越意識は、この後に起こった歴史的な事件に由来するからである。彼らは、このローマの残した権威主義体制を、自分たち民衆の手で打ち破ったという意識を持っている。彼らにとって、それはおそらくローマ帝国やギリシャの諸集落の伝統に立ち返った回帰であり、同時に歴史の新たなる幕開けであったのかもしれない。

ムネカミ

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by shikisima594 | 2007-02-09 23:59 | 活動報告
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