この論考は、愚考・文化国粋主義思想の趣旨を説明する一部である。次の命題に関して項を割くことにする。
〇五、民族独自文化の万物諸事の基点を、諸外国の影響の無い伝説時代に求め、 ここに来て、一つの肝心に触れなければならない。民族独自文化とは、歴史上どこにその純粋な姿を見出せるのか。その説明がまだである。民族独自文化の具体的な姿について言及するには、そもそもの姿が一体何であって、どこに見て取れるかという議論は欠かせない。今回は、民族独自文化の基点の設定を思考する。 民族独自文化は、これまで説明してきたとおり、民族の独自なる文化そのものではない。外来の美術或いは倫理などの文化に起源するものは、結局我が民族のものでないと説いた。我々は自らのうちに、頑固な排他性を認める必要がある。 しかしながら、この考察全体を始めるにあたって、我々には輸入に頼った文化しか持たないのではないかという疑念のあることを述べた。これらに対する反論を確たるものとするためには、民族独自文化の説明は、遂には補完されなければならない。 きわめて簡素な議論により、以下のことは自明ととらえられる。すなわち、民族独自文化の基点とは、その純粋な姿による。それは自立的にまず純粋であり、すなわち他の民族の影響を受けない。文化国粋主義の理想にとって、この条件は正当たる。 もしある時代において、その社会の凡そ全てが純粋なものであるということがあるとすれば、我々の理想はかの時代に対して惜しみない憧憬の感情を抱かなければならない。そしてそのある時代とは、道理からして言えば、他の民族文化の影響を受けない、あるいは微々たる波及しかない時代ということになる。 然るに、事物を個別に見るうえでは、この際我々のとるべき手法は次のごとくなる。つまり、現存のある事物を、普遍文化として見て、その歴史をたどるという過程である。最初に遡って、一体どういうものであったかを究めた上で、民族独自文化としての純粋な姿を割り出す方法とするべきである。 ところで、ここではある事物に関して、普遍文化としての面と、民族所属文化としての面をとらえなくてはならない。この説明の折、前者を普遍枠、後者を民族態としたい。民族態の民族独自文化としての真の姿は何かを、ここで規定するのである。 さて、その思考の上で重要なのは、我々の歴史認識である。我々が選ぶべき歴史に関して、重要な補足が二つある。一つには、科学という思想体系の認識を全然否定すること。二つめに、民族に数ある伝説的歴史のうち、我々が採るのは唯一つ、正統な神話、つまり、民族の権威の頂点たる伝説の認識であることだ。 一般的にいう科学的或いは客観的な認識の体系をたどれば、進化論或いは唯物論の諸理論によって歴史を解釈しなければなるまいが、そのようにすれば根源的には我々には原点とするべき姿が、人間でなかったころに遡るのであって、民族独自文化どころではない。そのような歴史観或いは歴史は抹消されなければならない。 本来、歴史はさまざまな説があり、歴史観も一定ではなかった。科学以外の認識を引き合いに出すことになったが、科学は数ある見解のうち一つにすぎず、他の認識が全て神話伝説と表現されているにもかかわらず、相互に全く異なる。 このさまざまな見解とは、例えば創唱宗教の世界観や世界像であり、或いはその影響を被る前の各民族のそれである。 では、我々の遡るべき歴史とは、いかにして選ばれるべきだろうか。 ここに我々の目的を省みれば、すなわち我々の純粋性と独立性であった。我々は、価値認識を含める全ての文化体系が、他者のそれから独立して純粋な姿でいることを望むのである。 しかれば、選択の指針は明らかである。こう考えていただきたい。それを信じることによって、我が民族の絶対的価値意識の体系を含める、全ての普遍文化以外の文化体系が、全く他の民族から独立しているということになるもののみが、我々を満足させるのである。 キリスト教では唯一神は、つまりヘブライ民族を創りそれを未来助けると約束した存在のことであるが、わが民族に価値を与えなかった存在を、我々は認知しない。イスラームでは、同じ神がアラブ人の言葉を選んだとされるが、なお我々には関係ない。また、輪廻からの解脱を説いた神々が仮面をかぶり、我が国の神として天地を作ったという本地垂迹論などもあるが、つまり主体はガウタマ・シッダールタと同じ価値認識の体系に属する存在であるという考え方であって、わが民族はその付属物に過ぎないことになる。 正統な神話、つまり、民族の権威の頂点たる伝説の認識は、以上の思考を以て導かれる。我々は、わが民族と最初から密接に関わりあう神々を選ぶ。しかも、その神々が民族の純粋な姿を決定したと考える。わが民族の神話は、こうして、わが民族の正統として迎え入れられなければならない。 ここで、我々の立場が明らかになった。わが民族の世界像は、神話に基づく。そして、神に作られ、外国の影響を被らなかった時代にあったものが、第一義的には民族独自文化の基点なのである。平たく言えば、あるものにとって、神代にあったものが、その純粋な姿であるということである。これらは普遍文化としては拙かった筈である。だがこの改善を期しても、その民族態に関しては、やはり価値があるとしなければならない。 なお、これをどの資料から採るかということに関して断るが、外国の影響を被る前に、この世界像の純粋な姿を伝える古典があれば、わが民族の純粋はまさにそこにあるといってよい。だが、残念ながら我が国の権威には、今のところ大いに外国の影響あるものしか残されていないとされる。記紀は、支那朝鮮やそのほかの文化を被っている。だが、権威に伝えられるところでは、これ以上遡れるものはない。つまり、これらはわかっている現段階での仮定にしか過ぎないのであって、わが民族の正統なる基点は、最も純粋なる記録が発見されるに至るまで、真相は定かとはいえない。 しかしながら、神話はそれ以上遡ることはない。この時代に起点さえ設定できれば、その具体的容姿はともあれ、その技術枠がわが民族の純粋としてあったのは間違いない。 もう二つ規定がなければならない。まずは、先行する民族態の優先である。 その普遍枠が、民族の始原からあったのであれば、その民族態は純粋なものといってよいのに対し、後に外国から来たものであったとき、どうしても外国の影響を免れないという可能性もある。ある普遍枠を考えるとき、以前これを取り込むのは自明と説いたが、外国伝来の民族態に先行して、我が国にもともと民族態のあったとき、そちらが民族独自文化にとってより純粋、より正統と設定されるべきである。 具体的には、もし我が民族言語を示す、漢字かそれ由来以外の文字がそれ以前の遺物から発見された場合、仮名文字の民族態と比較して、かの文字のほうが断然純粋な民族態となる。しかも、神話にそれがあったことになれば、相対的に比較するより、まず絶対的に純粋であるという規定がともなうこととなる。神話に起源すると言うことは、そのような論理から重要である。 もう一つには、神話によらずとも、あとから民族内に生まれたものである。その場合、それがまさに民族独自なものであることによって、その価値を認めることができるのである。願わくばその民族態が、これまでの体系に属するものとしてあることである。しかればその技術枠は、完全に民族独自文化となってわが民族に迎えられることになるのである。 ムネカミ 応援のクリックをお願いします
by shikisima594
| 2007-03-06 03:21
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