『品位ある資本主義』評論
 平成大不況の中で政府は「アメリカ型経済システム」の導入を選択した。金儲け一辺倒のアメリカ型市場原理主義が導入されたことにより、徹底的な金融自由化や規制緩和、撤廃が進められてきた。

 その結果、この数年ですさまじい所得格差、経済格差が発生した。それだけではなく、経済倫理、企業倫理の低下が深刻な問題として噴出してきた。

 昨年、ビジネスホテルチェーンの東横インがコスト削減のため、条例に定められた障害者用施設を設置していなかったことが判明した。しかも、罰則がないのをいいことに、条例違反をしたまま新規開業を強行した。企業倫理の欠如を象徴する事件であった。
2005年にも、乗客の安全性を軽視した結果、JR西日本の脱線・転覆事故が発生。一級建築士によるマンション・ホテルの耐震強度偽装も発覚した。


 本書、相沢悦幸『品位ある資本主義』(平凡社 平成十八年八月十日)は、アメリカ流金儲け万能主義と、それに追随しつつある日本経済を痛烈に批判している。それとともに、政府の無駄を省き、環境に配慮し、企業倫理を確立し、経済格差が少なく弱者にやさしい社会を目指すという選択を取るべきであると主張する。

これが本書における「品位ある資本主義」像だ。

そして、日本を「品位ある資本主義」に導くための参考例として、ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国を挙げている。著者の提言は、経済問題に限らず、エネルギー問題、教育のあり方、国防など多岐にわたる。日本が抱える問題が的確に分析され、多くの点で納得できる。

 しかし、少々極端な主張も見受けられる。
「人々のコミュニケーションを阻害する携帯メールは原則禁止する必要がある。」
「遺伝子組換え技術の導入により食料が危険になる。」
など、人体にどのような悪影響を及ぼすか十分に検証されていないにもかかわらず、「無害ではないと思う」から禁止すべきというのは、短絡的ではないだろうか。

 最後に、日本は、アジア諸国とともに歩む道を模索すべきであり、そのためには、アジア連合の早急な結成が必要だと結論付ける。これにより、日本は経済、軍事における対米依存から脱却することができ、また、アジア経済全体の発展に日本の経済力を役立てれば、日本もある程度の経済成長を実現できるとしている。そして、アジア連合結成後、日本はアジアの環境保護に全力で取り組まなければならないとしている。

 さらに著者は、EUでは実現できなかった「防衛共同体」の設立を説く。「防衛共同体」とは各国軍隊を統合し、各国が軍を独自に行動できないようにするもので、著者によると、それを設立しない限り「アジアは日本の再侵略の脅威から解放されない」らしい。

 ASEAN諸国との経済統合、環境保護活動への支援ならともかく、いきなりアジア連合の結成と軍事力の統合とはあまりに非現実的だ。そもそも、「日本の再侵略の脅威」などと考えているのは特定アジアだけだろう。
また、アジア最大の軍事力を保有し、周辺国を侵略し、アジアだけでなく世界的な軍事的脅威となっているのは中国だ。

筆者の主張は極論だと思う部分もあるが、的を得ている部分も多く、耳を傾ける価値はある。

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by shikisima594 | 2007-04-28 21:14 | 読書録
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