「みどりの日」の4日、皇居・吹上御苑で一般の人を対象にした「自然観察会」が初めて開かれた。全国各地から抽選で選ばれた95人が参加、江戸時代から生い茂る巨木が群生する手つかずの森の緑を楽しんだ。
(中略) 今回の催しは、「みどりの月間」が今年から始まったのを受け、吹上御苑の自然を「国民とともに分かち合いたい」との天皇、皇后両陛下の意向を受けて、両陛下が散策することも多い同御苑約25ヘクタールの一部を公開して実施された。(5月5日、毎日新聞) この記事を読んだとき、いつも暗く陰惨な世相の中にあって、心洗われるような、なんとも清々しい思いがした。これが日本なのだ、と。天皇陛下は常に国民と共に存在され、国民と一体であらせられる。天皇皇后両陛下、御自らの御希望で、国民を吹上御苑にいれられ、ともに自然の大切さを分かち合おうとされる。 そしてさらに、天皇陛下と、それを頂く我々日本民族が、森羅万象、八百万の神々のまします自然と共生しているのだと、改めて拝察申し上げる事が出来た。皇居勤労奉仕などで皇居に参らせていただく機会が何度もあったが、その折に感じるのは、実に雄大にして純朴な自然そのものである。 徳川幕府時代からの名残をとどめる建築や庭園もあるにはあるが、全体的にヨーロッパの豪奢華美な庭園とは全く趣を異にしている。まさに自然そのものである。東京で、動植物の調査を行うと、毎年のように新種の動植物が発見されるのが皇居であることからして、皇居の自然がいかに豊かな、ありのままの自然であるかが拝せられるだろう。 とりわけ、先帝陛下(昭和天皇)は自然を深く愛され、吹上御所ちかくの庭園は、あくまでも、ありのままの姿にしておくように強く御希望され、人工的な加工をされることを望まれなかったというぐらいである。その先帝陛下の自然と共生される御遺徳を偲びまつり、長きにわたり、先帝陛下のお生まれになられた日を、「みどりの日」と称してきたのである。 そして今回の、天皇皇后両陛下による、吹上御苑への一般国民をお招きになられた事などは、国民と皇室のながき伝統的な関係を象徴する出来事だとも思うのである。京都にある、京都御所の壁をご覧いただきたい。一国の君主の住まわれる御所に関わらず、その壁は高くない、むしろ外国と比べれば圧倒的に低いと言われている。 ヨーロッパの宮殿などは、高い城壁と堅固な門と、いかめしい衛視がついている。日本の皇居は江戸城の名残で、お堀に囲まれているが、それはもはや国民と皇室を隔てるものではなく、庭園の美であり、千代田区のビル街に安らぎを与えるものである。 そしてそこには、いくつもの橋が架けられ、平日であろうが、休日であろうが、多くの国民が皇居のなかに庭園の散策や、ジョギングなどで入る事が出来る。日本の皇室と国民の関係も、まさにその通りで、大きな橋が架けられ結び付いているのである。 今回、皇室が自然と共生され、国民と共に歩まれる御姿を拝し、畏れ多い限りであるとともに、我々国民も、自然を大切に、天皇陛下から寄せられ給う御信頼に応え奉らねばならないとの思いを深くしたのである。それこそが、我々の祖先が歩んで来た、自然と共生する、やまとごころであろう。 応援のクリックをお願いします
by shikisima594
| 2007-05-05 20:39
| 随想・雑記
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