『反米論を撃つ』を撃つ 第四回
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この連載もついに後半にさしかかった。実はMr.Tadae Takubo & Mr.Yoshihisa Komoriにとって、今までの対談は前哨戦のようなものだったかもしれない。というのも、この『反米論を撃つ』は全261頁で構成されているが、「第五章西部邁、小林よしのりへの弔鐘」、「第六章『反米左翼』西部、小林の尻尾」の西部、小林両氏を批判する二章が計100頁もあるのだ。

まぁ、有名どころを叩かねば本が売れないというのもあるだろうし、保守論壇で真っ先に親米保守に仮借なき筆誅を加えたのが両氏であるから当然と言えば当然か。そこで今回は第五章を取り上げて、Mr.Tadae Takubo & Mr.Yoshihisa Komoriのアメリカを擁護する歪んだ言説を中心に僕なりに検証してみたい。

この第五章と第六章は、主に西部、小林両氏の対談本『アホ 腰抜け ビョーキの親米保守』(飛鳥新社、平成15年7月発行)で二人が語っている内容をMr.Tadae Takubo & Mr.Yoshihisa Komoriが批判する構成になっている。とりあえず二人とも西部氏、小林氏の言葉遣いを随所で下品で汚いと批判する。

小林氏の毒舌は周知の事だが、Mr.Tadae Takubo & Mr.Yoshihisa Komoriも頁を進めるに従い徐々に言葉遣いが落ちて行く。Mr.Tadae Takuboが第五章を通して言っている事は、アメリカが世界の警察であり、イスラム原理主義過激派達が世界の秩序を破壊する者達という図式だ。

田久保「まず、小林さんが、『わしも西部氏も、一度たりとテロリストを支持したことはない』と弁解がましく書いていますが、逆に言うと、批判は一切していないんです。『支持しない』ではなく、『許してはならない』のがテロであり、それが世界の世論ではないですか。アメリカを同一に論じては気の毒でしょう。警棒と棍棒の区別がない。」(129頁)

田久保「片方は大犯罪者で、その犯罪を取り締まるために、警棒を振るおうとしているのです。警棒じゃなくて、棍棒で、社会の秩序を乱そうとしている、それを阻止するための力なのだという視点が全然ありませんね。」(146頁)

そもそも誰がアメリカを警棒の唯一絶対の持ち主に認定したのかは知らないが、精神的アメリカ人であるMr.Tadae Takuboらしい二元論、価値相対主義的な発想で、全肯定と全否定、アメリカかテロリストか、極めて単純明快でアメリカ映画をそのまま真面目に語っているような言説だ。

「世界の世論」などと大上段に構えて言う。確かにイスラム圏を含めて世界中の多くの国々の“政府”がアフガン攻撃とそれに続くイラク攻撃を支持した。しかし、それらの国々の“国民”はどうだったか。イスラム圏はもとより、日本、ヨーロッパでも、アメリカの協調を欠いた単独主義に対して、多くの批判の声があがった。

民主主義国においても、政府とは国民の声を直に反映するものではない。政府は政治的判断、つまり妥協や駆け引きで判断を行う。率直な世界の多くの世論はアメリカの行動に反対したはずだ。Mr.Tadae Takubo & Mr.Yoshihisa Komoriの言説に従えば、世界はアルカイダをも圧倒する数の反米主義テロリスト支援者であふれ返っていることになる。

今からすれば「後出しじゃんけん」の感もあるが、Mr.Tadae Takuboがイラクの大量破壊兵器に言及している箇所も紹介する。

田久保「ブレア首相が序文を書いている文書『イラクの大量破壊兵器ー英政府の評価』は一部に誇張があったと問題になっていますが、イラクがいかに不当な所持をしているかの事実は正確です。」(142頁)

平成十五年三月二十日のイラク戦争開戦以来、今日にいたるも「大量破壊兵器」は発見されていない。それに「不当な所持」ってなんだ?「大量破壊兵器」の所持には免許でもいるのか?そんなものは存在しない。じゃあアメリカが最大の大量破壊兵器を不当に所持する国家だ。しかしそれでもアメリカは世界の警察官だからいいらしい。屁理屈にもなっていない。

ついでに解説しておくが、「大量破壊兵器」とは核兵器、生物兵器、化学兵器のことであり、実際にイラクは過去に生物兵器と化学兵器を所持して使用したことがあるが、すでに廃棄したと言っており、開戦前の査察でも発見されていない。

田久保「今いちばん問題になっているのは、要するに大量破壊兵器が出てこないということですが、巨大な悪の継続に目をつぶって、大量破壊兵器が見つからない点だけをとって、鬼の首をとったような言い方をするのはおかしい。
この問題は、イギリスや、アメリカでも、国民に対するPRの一部に意図的な操作があったということが問題になっているんでしょう。その意図的な操作があったかないかで、イラクの全部の罪がぬぐわれてしまうと考えるのは非常に危険なことではないでしょうか。」(143〜144頁)

何が言い訳するに事欠いて「鬼の首をとったような言い方」だ。Mr.Tadae Takuboはイラク戦争開戦直前に「米国の目的は、あくまでも大量破壊兵器を作り、所有し、それをテロリストに流す恐れのあるサダム・フセイン政権の打倒あるいは武装解除である。」(平成十五年二月三日、産経新聞)とあるように、「あくまでも」と、限定までして「大量破壊兵器」の武装解除が目的であると言っていた。さすが、ダブルスタンダード、二枚舌を伝統とする米国本流保守派のMr.Tadae Takuboだ。
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by shikisima594 | 2006-02-10 14:45 | 読書録
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