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9・11テロの照らし出したもの
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 深夜のラジオからニューヨーク貿易センタービルに飛行機が衝突した、というニュースが突然聞こえてきた。ふーん、アメリカ人はおっちょこちょいだなぁと思っていたら、二機目が隣接する方のビルに突っ込んだという報道を聞いて、ようやくただ事ではないと気付きテレビを付け、そこに映し出された光景に衝撃を受けた。

 平成十三年九月十一日に発生したアメリカ同時多発テロから今日で五年がたった。時の流れの早さもそうだが、このいわゆる911テロは大きな波紋を世界に広げ、その波は今も収まらず、それどころかより大きな波になろうとしているのではないか。

 このテロを受けてアメリカは、テロとの戦いを掲げ、毎度ながら“巻き込み確認”をしない世界戦略を展開しはじめ、野蛮なテロリズムに与する者と、文明的な自由主義・民主主義陣営に属する者とに世界を分類した。

 この流れを受けて日本では「民主主義を守るためアメリカと共にテロを撲滅するのが国益だ」という声が主に右側の人からあがり、左側の人は「テロはよくない、許せない。だからといって戦争も…」という朝日新聞流の明確な結論のないイエスバット論法に陥り、杭に鎖をつながれた犬がグルグル回るかのようだった。

 どちらも日本が守るべき至上の価値を自由と民主主義と生命・財産と考え、今回のテロは断固許せないと考えていた点では全く同じで、武力報復に積極的か消極的かの違いしか見受けられなかった。

 しかし、このテロの背景には自らの自由と民主主義が最高のものであり、世界にこれを普及させなければならないと考え、サウジアラビアをはじめ中東などでパワーを展開していたアメリカの独善性があり、その後の世界を「文明」と「テロ」に二元化して武力報復一辺倒となったアメリカの姿勢も短絡的と言わざるを得ないものだった。

 これに対して従来は親米的な言説が目立っていた保守言論からアメリカを批判する声がおきた。小林よしのりなどがそうで、小林は前述のような左右の論客達の欺瞞的態度とアメリカの独善性を厳しく批判した。その言説に西尾幹二、岡崎久彦らが国益を守るために親米は必要であると反論した。

 これが保守論壇に親米・反米論争を巻き起こすことになる。一部には「左翼のような内ゲバはやめるべきだ」という指摘もあったが、自分はこれらの動きは「内ゲバ」であるとは考えない。小林もこれは内ゲバではなく、全く思想の違う者同士の戦いであるとしている。

 というのは、これらの親米派と反米派が実は似て非なるどころか、かなり思想的に異質なものであり、その分裂は近年になって生じたのではなく、古くからあったという指摘があるからだ。ネットの巨大掲示板群では次のような分かりやすいコピペが出回っていた。

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日本の対立構造は
親大陸派 (共同体主義、ランドパワー)=親アジア主義、親儒教、親社会主義、親官僚制(=中央集権)親全体主義、親人治主義、親合理(観念)論、親水戸学、親平田派国学、親朱子学

親英米派 (自由主義、シーパワー)=親国際主義、親資本主義、親封建制(=地方分権)、親自由主義、親立憲主義、親法治主義、親経験論、親仏教、親国学(本居宣長)、親徂徠学

なんだよ。
親大陸派は天皇制を認めるかどうかで国家社会主義(親ドイツ)か共産主義(親ソ連)に分かれ、 親英米派は伝統の重視の度合いで保守主義と自由主義に分かれる。
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 いくつか疑問点や異論はあるものの、なるほどと思った。確かにこうした対立構造は戦前にも存在した。大アジア主義を唱え大陸を指向するグループと、親英米主義のもと海洋国家を目指したグループだ。こうして見ると大東亜戦争は主に親大陸的要素が強かったとも考えられる。

 戦後は両者とも共産主義への脅威から小異を捨てて大同に付いて結束していたが、冷戦構造崩壊により、もとの対立軸が鮮明になるのを待つばかりであった。9・11テロは暗がりで互いの姿が見えなくなっていたところに打ち込まれた照明弾だった。これにより冷戦構造下の関係が崩れ、本来の対立関係に戻っただけなのだ。

 時代はまさにアメリカによるグローバリズムと世界戦略、中国による覇権主義がますます加速の度合いを増している。そうした中で自分がどちらであるかを無理に分類する必要はない。それこそ李氏朝鮮の事大主義と同じだ。我々が本当に考えるべきは、9・11テロを実行したタリバン戦士達のように、自らの身命を賭してでも守るべき物とは何なのかを今一度考えるということではないだろうか。

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by shikisima594 | 2006-09-11 21:34 | 随想・雑記
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