ここに連載し説明している文化国粋主義とは、私のもつ社会的理想の仮称である。
今回の章は、この項の説明に用いたい。 一二、また相対的視点の確保のために、 ここに来て、我々は自問の必要を訴える。しかるに、次のように設問する。 もし偏狭な民族主義者がいるとして、それも、彼がまさに自民族のほかには要らないと考えることによるものであったとする。我々は、彼のようなものを最も軽蔑すべきである。しかしながら、一体我々は何故彼の主張を誤りとみなせるのだろうか。こうした問題に関しては、実際明確に言及してこなかった。 しかしながら、我々にはこれに回答の用意がある。まずこの設問自体を、逆に考えていただきたい。 すなわち、なぜ我々は、多くの民族を守ることを善とするのだろうかという問いである。我々は、直接的にはこちらの設問に答えることとなる。抽象的にすぎる説明かもしれないが、以下のように応える。 そもそも民族というものは、単にそれ自身が本質をもって規定されているといいうるものではない。 文化国粋主義は、次のような考えを持つ。ある民族の規定は、明らかに、自己と他者の二つの規定によっている。 これについては、少し具体的な例を交えて、説明の必要があると見る。 まず、民族の自己の規定とは何であろうか。それとは民族が、論理としてもつ、集団を形成するための目的を含む思想を表している。多くの場合、それは神話やその類の物語である。これを失ったとき、民族は精神や倫理或いは論理に独自性の根拠を同時に失うことになる。だから端的に言って、同じ神話を信じることで、彼我が違っているべき根拠はなくなってしまう。根本的な目的論理には、少なくとも存在しなくなるのである。 また一方では、民族とはある意味で、より客観的な視点から分別されることがよくある。それは、現実の文化的な差異があることによっているのだ。同じ神話を信仰しているところで、民族の差異は強調される。形質や服装、その他の可視的・可感覚的な文化が相互に比較できる状態であれば、彼らはそこに自己と他者を見出すことができる。そして、実はこのことこそが最重要事項である。 この説明をもっと展開すれば、民族は外見の違いが重要であることになる。外見の相違が決定的であった場合、彼らは文化的な他者を認識する。逆にこのことは、文化的な外見がなんら変わらない人々と接している場合には、彼らが同一のものとされることを示し、しかもそこに他者を覚えないから、それに対比した自己を覚えないという論理を導き出す。 しかれば、この先の可能性についての論考は安易である。もし世界中で、言語や服装や、そのほか外見にまつわるあらゆる差異がなくなったとき、果たしてどの民族が自己を「民族」と認識できるかという問題が我々の脳裏をかすめると同時に、次の結論は正当であるとみなされる。民族は複数なければ、自己規定、ひいては存在ができないという結論である。我々は、相対的な存在という状態を決して軽んじてはならない。 我々は内面の自己規定を求めるのであれば、確かに民族などというものは要らないかもしれない。しかし、他者との違いとその多様性とを奉ずる以上は、たとえ優越性を求めた場合でさえ、他者の存在は必要とみなされなければならない。民族は、他の民族の存在を希求するのだと表現しても、差し支えないと考える所存である。 ムネカミ 応援のクリックをお願いします
by shikisima594
| 2007-05-06 23:59
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