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文化国粋主義という思想 〇二三
 ここに連載し説明している文化国粋主義とは、私のもつ社会的理想の仮称である。
 これまでに本論は総括され、二つの重要な補足も施した。遺すところは、既に最後の補足事項のみである。

 前回、我々の普遍的理想は既に明らかにされた。民族独自文化のまったき姿を持つ民族の政治組織を、普遍文化が束ねるという言及である。その体制を、我々は理想とする。そして、ついには全体の主張も帰結を迎えつつある。今回は、様々な理想について吟味し終えたところで、改めて現実世界に目を転じてみたい。
 それとは以下のような精神を持つ。

 一七、西洋的文化が、国際関係社会に深く取り入ったことと、それにより、世界で西洋的文化が圧倒的優位を保っている状況を反省し、

 正直なところ、私がここまで書いてきた理想は、この現実とはかけ離れたものに過ぎない。なんらの貶めるような悪意を持たないものでさえ、この理想全体は非現実的なものであるとの考えを胸に抱くだろう。それは一方厳然たる事実である。わが文化国粋主義の理想は、この世界から離れている。

 しかしながら、ここにあげられるのは、この世界の現実であると同時に、この世界で起こってはいけなかったことなのではないだろうか。現状は最も現実的であるが、それは理想が反映された世界では決して無かった。このことは問題ではなかったろうか。
 この点は、もっと深く掘り探る事ができる。だがすなわちその問いはさしあたり単純なものでしかない。我々は現実を良しとするか否か。その趣旨を入れながら、ここに現実を反省してみるべきである。

 未曾有の悲劇は、まさしく一人の男の功績に寄った。その名も、コロンボである。
 偶然にも彼らのような野蛮人が、徳に不相応な船舶技術を手に入れて、世にも無防備なアラワク人の連邦に侵入してから、全ての運命は動き出した。カリブ諸島の大部分は、初期の日本にも似た連邦統治体制であった彼らの領地であった。彼らは芋とタバコの栽培のほか、目だった規模の技術は持っていなかった。そして、彼らが公益によって得た、アステカやマヤの金細工を身に着けているのが野蛮人どもの目に留まったのである。
 想像を絶する悪夢の後、今日、彼らアラワクを次ぐガリフナ人たちは、およそ四十万人である。彼らは、奴隷船の生き残りである黒人たちとの混血と、その他の病気に免疫の無い純血種の淘汰及び酷使による絶滅の結果、かつての人種的特長はほとんど残っていない。彼らはアラワク語を伝えるが、その他の様々な文化は結局残す事ができなかったらしい。彼らは今ほとんどがマヤ人のユカタン半島に住んでいて、かつての郷土はハイチやキューバなどの植民地国家に占領されている。
 アラワク人に続いて、甚大な迷惑をこうむったのがマヤ人であった。マヤ人は今、互いに通じ合わない十以上の言語の総合で八〇〇万人程しかいない。新大陸で唯一と言われる文字文化は、悪魔の聖典として粗野なカスティーリャ人の聖職者にほとんど焼かれてしまったために、いまや自然に読める者は存在しない。高い技術力を誇った彼らの体系的都市国家社会は、カスティーリャ人たちの横暴な政策とその後の植民地国家により完全に衰退した。
 また、世界有数の建築技術を駆使して作られたメシコ・テノチティランの王が率いるナホア人たちは、今日、彼らの築いたアステカという王国の名を冠した全く別の植民地国家の中で、カスティーリャ人主体の階層に押し込められている。
 同じように、植民地国家の中で、かつての主権を完全に否定されてしまったがごとき人々は世界中にいると見なければならない。彼らの主権を否定してまで、果たしてそのちの植民地国家の正当性を信じてよいものだろうか。侵略は成功したか否か。今日、この様な汚らわしい法体系が世界に実効性を誇っている。

 さらに、彼らから吸い上げられた金銀は、欧州に持ち帰られ、やがて戦争と搾取と植民地主義の近代が始まる。西洋人画世界を座席した時、彼らの全ては、世界を搾取する悪人以外の何者でもなかった。そしてその成功は、現在に至るまで、主権の有無をはじめとして民族の不平等をもたらしている。
 最終的に覇者に落ち着いたのはアングロサクソン人であった。イングランドの範囲に過ぎなかったイングランド語は、いまや世界共通語である。彼らは、スペインのカスティーリャ人や、アラブ人よりもうまく世界を征服した。現在日常に溢れる洋風は、ほとんど彼らのものである。
 彼らは自分の文化圏が世界中にある状況を利用し、今後国際的に人口を流動しようとする言説を起こしている。明らかに、その住む範囲の多いものにとって有利になるにもかかわらずである。

 この様に見てくると、我々は現状に不快感を催すようになる。これは確かにおきるべくしておきた事であったかもしれない。しかし、おきるべきであったか否か。

 奢るつもりは無い。ただ率直に言って、我々は歴史事実を裁く視座を手に入れたのである。我々の答えは、既に決している。断固として我々には、世界の成り行きが望ましかったものとは解せない。

ムネカミ

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by shikisima594 | 2007-06-23 23:59
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