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久間暴言を糺せ!
 久間暴言を糺せ!_f0018981_1374380.jpg 「米国はソ連が日本を占領しないよう原爆を落とした。無数の人が悲惨な目にあったが、あれで戦争が終わったという頭の整理で、今しょうがないなと思っている」

 これはアメリカ人の発言かと思ってしまった。およそ日本人の発言とは思えない。ところが、これが我が国の現役防衛大臣である久間章生氏(写真)のものであるというのだから、呆れてしまう。原爆投下が仕方ないと認識しているような人物が防衛大臣で、どうして我が国の国防が盤石たりえるのか。

 我が国の国民一人、財産一円、領土の一歩といえでも、断じて死守する責任を負うのが防衛大臣である。その防衛大臣が、アメリカによる三十万人にも及ぶ日本人無差別虐殺を容認するが如き発言をするのは断じて許し難い。

 この発言は原爆投下を容認するのみではなく、先の戦争の実態を否定し、「正義」をアメリカ側に据える意味合いも含ませているから、現職議員の発言としても更に悪質である。失言ではなく、暴言である。

 さすがに今回の久間暴言は、マスコミの格好の餌食となり、多くのメディアが食いついているが、どこの報道も通り一辺倒の安易な言説に終始するにとどまっていたように見えてならない。「久間氏の発言はよくない。被爆者の方も怒っている」と報じるのみである。

 原爆を投下したアメリカに正義はあったのか、その意図はなんだったのか、というところにまで論及する者が少ない。さらには、アメリカに「原爆投下謝罪要求決議」を日本政府がとるべきであると主張するマスコミは無い。

 久間氏の原爆容認暴言はもちろん問題である。しかし、それは「原爆投下が許せない」という前提の上で成り立つ話だ。ならば、久間暴言を批判する轟々たる声の中で、アメリカによる原爆投下に対して、「原爆投下謝罪要求決議」すべきであると論をすすめる者がいないのかと不思議でならない。

 ここにこそ、今回の久間暴言の深い問題があるのではないか。実はこの発言は久間氏だけの持論ではなく、いわゆる親米系の保守派からも呈されている。親米保守派で杏林大学の田久保忠衛教授は、産経新聞の古森義久記者との対談本『反米論を撃つ』の中で、

「日本の徹底抗戦の雰囲気の中で、原爆が落ちなかったならば、ライシャワーが言っているように、 『原爆がなければ日本の軍部が徹底抗戦を続けて、米軍は数十万の死傷者を出したであろうし、日本側も戦死者以外に数百万の非戦闘員が餓死し、日本という国は事実上破壊されていたところであろう』 この認識には僕も同感できるところがある。」(157〜158頁)

 今回の久間暴言と趣を同じくする暴言であるが、このような認識をもった親米保守派は少なからずいる。逆に、原爆投下は許せないけど、日本も中国や朝鮮で悪い事をしていたから…といって、アメリカの原爆投下に期せずして免罪符を与える左派連中もいる。

 「大東亜戦争の正義」を叫びつつも、原爆投下を容認する親米保守派。原爆投下を批判しつつも、戦前の日本をこき下ろす事によって原爆投下を弁護する左派。このねじれ現象の生み出したものこそが、今回の久間暴言を取り巻く状況である。

 久間大臣を責める事ができても、アメリカを責めることが出来ない。いったい何を恐れているのか。久間暴言が悪ければ、アメリカはもっと悪いに決まっている。ところがその当然の事実を指し示し、カウンターパンチすらも繰り出せない惨状と、国民を舐め切った自民党の実態を照らしだしたのが、今回の久間暴言では無かったか。

 久間暴言を糺す事によって、アメリカの原爆投下と、現在の盲目的な日米関係を再考する大きな機会をつくりだしていくべきではなかろうか。

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by shikisima594 | 2007-07-02 23:15 | 随想・雑記
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