団塊の世代が退職して、いままでの自分の半生をつづった自叙伝を自費出版する人が増えているという。いったいそんなの誰が読むのだろうかと思ったりもするが、この連載もそんなものの類いと思っていただきたい。
さて、「国士舘大学の民族派系サークル」と聞いたら、みなさんは何を想像されるだろうか。きついヤキ、押忍の連呼、極端な上下関係、先輩命令には絶対服従…… 過去に存在した民族派系サークルにはそうした傾向を持つところがいくつかあったようであるし、実際に自分もそのように想像していた。だから、皇国史観研究会に入るときは、先輩からブチ食らわされるのは覚悟の上だったが、あまりに優しくて人当たりのいい先輩たちばかりで、逆に驚いたのを覚えている。 これは最初は甘やかしておいて、抜け出せなくなってから本性を表すのかと思ってみたりもしたが、先輩方はずっと優しかったし、そんな猜疑心なんてすぐに吹き飛んでしまった。 僕が一年生の四月で入会して、四年生の現在に至るまで、先輩方からは飯や酒はたらふくごちそうになったが、ゲンコツやビンタは一度もちょうだいすることはなかった。ただし、礼儀作法については、やはり国士舘の伝統あるサークルらしく、細かく指導を受けた。 先輩に対する挨拶の仕方、メールでやり取りする際の文章の書き方、電話の受け答えの仕方、道の歩き方、酒席でのビール瓶の取り扱い方、旗に対する態度などなど… しかし、そんな中でも先輩の考えに対して、後輩が率直に意見を言えた。キツい上下関係なんてものじゃなくて、かなりフランクな関係があった。そういった意味で、皇国史観研究会というのは、世間一般の人が想像する国士舘の民族派系サークルとは相当に雰囲気が異なりながらも、国士舘の本質に近いサークルだと実感した。 ここで、当時の皇国史観研究会による学園祭の様子も書いておきたい。国士舘では五月と十一月にそれぞれ学園祭があるが、その準備をする時の会議でも、僕ら当時の一年生も意見が十分に言えたし、しっかりと仕事も任せてもらえた。 ちなみに僕が一年生だった平成十六年の学園祭企画は、五月の鶴川祭が日露戦争百周年記念展示で、十一月の楓門祭が「日本人受難の歴史」と銘打って、幕末以降の日本が周辺諸国や欧米列強から被って来た惨害の歴史を記した。 僕の入学する前年の学園祭の企画は、鶴川祭が北朝鮮による不審船に関する展示で、この時は防衛庁(現在の防衛省)からの資料提供を受けていた。楓門祭が 「蛍になって帰って来る 特攻隊の言乃葉」と題して特攻隊に関する展示をやっていた。 この頃の学園祭といえば、「会場のレイアウトはどうする?」といっても、とりあえず日章旗や旭日旗をデカデカと掲出し、会員のコレクションの銃剣や模造刀を並べるばかりで、「BGMどうする?」といえば、もちろんメジャーからマイナーな軍歌が会場によどみなく流れることになるのがオチであった。とくに戦前のレコードから直にCDに焼き直したのは、音の割れ具合と相まって、かなり危ない雰囲気に…… あげくに企画のビラを、右翼団体が街灯や電信柱に貼ってあるビラのパロディでつくって貼り出してみたりした日には、会場は閑古鳥の大合唱で、さすがに空しさを覚えたものである。まあ軍歌には詳しくなったから良かったかもしれないが。僕の同期など、ずっと軍歌を聴かされたあと、サイゼリアに飯を食いに行ったら、店内のBGMが軍歌に聞こえたというのだから、その調子が察せられるだろう。 そこにある先輩がやってきて、「なんだよ。まだ軍歌なんて聞いてんのかよ!?これカケろ」とCDを差し出した。僕はてっきりポップかユーロビートぐらいだと思って、CDプレーヤーに放り込んだ。聞き慣れない古い外国の歌が聞こえて来た。調子のいい感じの歌だったから、シケた軍歌よりはマシだろうと思っていたら、その歌が「ナチス党歌『ホルスト・ヴェッセルの歌』」のであった事を知った時には後の祭であった。 おかげで、学園祭開催期間中の来場者数が百人に満たないぐらいであった。笑い話のような話だし、実際に笑い話なのだが、これではダメだと思ったのは平成十六年の楓門祭を終えたあとだった。その翌年の学園祭はどうなったのか。それは次回に譲ることにしたい。 写真は皇国史観研究会の会員バッチである。 タカユキ
by shikisima594
| 2007-07-25 23:58
| 随想・雑記
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