2006年 04月 20日 ( 1 )
警察官とホームレス
 天気がよかったから自転車に乗って遠出してみた。小春日和だから気分もよかった。ところが、そんな気分が一気に逆転するような出来事に出くわしてしまった。

 渋谷駅前の交差点に差し掛かった時だ。何やら警察官二人がホームレスのおじさん二人と揉めている。ホームレスが路上の植え込みの脇に、駅のゴミ箱なんかから拾ってきた雑誌を売っていたらしい。新宿駅などではよく見かける。今日発売の雑誌が百円ほどで売っている東京名物だ。

 その雑誌売りのホームレスに警察官二人が「さっさとしまってどっか行けよぉ」と言っている。ホームレスの人は六十代後半ぐらいで、すっかり日に焼けた茶色い顔をこわばらせていた。警察官はそんなホームレスを軽蔑するような目つきで「ここでこんな事するのは駄目なんだよ。さっさとやめろ」と腰に付けた警棒の柄を指先で叩きながら言っていた。

 警察官は大学を出て五年もたっていないような若い警察官だった。そんな警察官が、もしかしたら自分の父親以上年の離れた者に丁寧語も使わずに、B系の不良がよたりながら悪態をたれるようにホームレスに接していた。確かに路上での雑誌販売は禁止されている。

 しかし、僕はその光景がとてつもなくおぞましい物に見えて仕方がなかった。自分たちは公務員だからホームレスに身を落とすことが無いという安全圏にあぐらをかいて、権力を笠に着て弱い立場にある人に傲慢な態度であたる。これが武士道の国日本の治安と正義を守る者の姿なのか。

 あたりまえの事だが、この国で生まれながらにホームレスになるものはいない。生まれて普通に育って、仕事もして、税金も納めてきた。とくにその六十代ぐらいのホームレスの人など、日本の戦後復興の労働力として活躍された方だったかもしれない。

 そうした人々の働きで築かれた繁栄の恩恵で育った僕と大して変わらない世代の警察官が「さっさとしまってどっか行けよぉ」と言っているのに、言いしれぬ憤りを感じた。それに、「どっか行け」と簡単に言うけど、どこに行くのだ?

 結局、その「どっか」でまた雑誌の販売なりなんなりして、別の警察官から「やめろ」と言われるに決まっている。それとも他の空き缶拾いなり、鉄くず集めなどの仕事に転職しろとでも言うのだろうか。でなければ野垂れ死ねと?どうせ警察官は「そんなこと知ったことではない」というのが本音なのかもしれないが。

 近年は公園のベンチでホームレスが横になって眠れないように手すりや肘掛けを取り付け始めた。公園にテントで住んでいるホームレスへの行政による強制排除も増えてきた。じゃあ彼らへの生活保障や労働環境の整備は?こちらはとんと聞かない。

 最近は野生動物の住みよい環境作りが進められている。それはいいことだ。でも、人間の方は顧みずでいいのだろうか。格差社会の広がりはあるにせよ、ホームレスはいつの時代もいるものだ。それとどこかで妥協点を見いだそうとせず排除一辺倒で望むのは絶対に間違っている。

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by shikisima594 | 2006-04-20 00:51 | 随想・雑記